絶縁抵抗の落とし穴!漏電ブレーカーが落ちる本当の原因と対処法

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第1章:絶縁抵抗は正常なのに、なぜ漏電ブレーカーが落ちるのか?

漏電ブレーカーが突然落ちたとき、まず多くの現場で行うのが「絶縁抵抗測定」です。
絶縁抵抗値が1MΩ以上あれば「OK」とされる場面も多く、「じゃあ問題ないな」と判断してしまうことがあります。
しかし、ここに大きな落とし穴が潜んでいます。

実際の現場では「絶縁抵抗は問題ないのに、なぜか漏電ブレーカーが動作してしまう」というケースが少なくありません。
この場合、真の原因は“絶縁不良”とは限らず、微弱な漏電電流の積み重ねや、一時的な湿気・結露・誤配線など、別の要因によってブレーカーが感知している可能性が高いのです。

特に漏電遮断器は、「電流の経路の不均衡(不平衡電流)」を感知して動作する仕組みであるため、回路のどこかで“少しでも電流が大地に流れていれば”作動する構造になっています。

絶縁抵抗値は正常でも、漏電が発生する仕組み図
▲ 絶縁抵抗値は正常でも、見えない漏電が起きているケース

つまり、テスターで絶縁抵抗を測定したときには検出できないような、μA(マイクロアンペア)〜mA(ミリアンペア)レベルの漏電であっても、漏電ブレーカーはその「差」を検出して遮断動作を行います。

さらに悪いことに、設備機器の中でわずかに漏電している部品(例えば浄化槽のブロワーや古い照明器具の安定器など)が複数台存在している場合、それぞれが単体では30mAに達していなくても、合算して閾値を超えてしまうことがあります。

このような状況下では、いくら絶縁抵抗計で1MΩ以上の値が出ていても、それは「目に見えない漏電を証明できていない」だけであり、現実的には漏電遮断器が正しく作動しているのです。

本章ではこの「見えない漏電」をどのように把握するか、そしてその対処法について次章からさらに掘り下げていきます。

第2章:漏電ブレーカーの仕組みと限界

漏電ブレーカー(漏電遮断器)は、漏電による感電や火災を未然に防ぐための重要な保護装置です。
基本的な仕組みとしては、「電気が行ったら必ず戻ってくる」という前提に基づいて動作しています。

回路内を流れる電流のうち、行き(相線)と帰り(中性線)の電流差があると、どこかに電気が漏れていると判断され、漏電と検知されます。
その差分を検出するのが、ZCT(零相変流器)という部品です。

漏電ブレーカーの仕組み図(アニメ風)

ZCTが電流差を検知すると、瞬時にトリップコイル(引外しコイル)を動作させて、回路を遮断します。これが「漏電ブレーカーが落ちる」現象です。

しかし──ここに落とし穴があります。実は、絶縁抵抗測定でOKだったのに漏電ブレーカーが作動してしまうケースが存在します。
これは、「微弱な漏れ電流」が常時流れていたり、「電源投入時に一時的に大きな突入電流」が発生することで、ZCTが誤動作してしまうことがあるからです。

つまり、絶縁抵抗測定では問題なし → でも漏電ブレーカーは動くという逆転現象が起こり得るわけです。
これこそが、現場でよくある「絶縁は良好なのに、なぜかブレーカーが落ちる…」という謎の原因の正体です。

次章では、実際の現場で発生しやすい「絶縁抵抗だけでは見抜けない漏電の原因」と、その対処法について深掘りしていきます。

第3章:漏電ブレーカーはどうやって漏電を検出するのか?構造をやさしく解説

現場で「漏電ブレーカーが落ちた」というとき、それは「電気が漏れている」というシグナルです。でも、その漏れ電流はどうやって検知されているのでしょうか?

そのカギを握るのが、漏電ブレーカー(漏電遮断器)内部に搭載されているZCT(零相変流器)と呼ばれる装置です。

ZCTによる漏電検知

このZCTは、電線に流れる「行きの電流(負荷側)」と「帰りの電流(接地側)」をひとつのコイルでまとめて感知しています。正常な状態なら、行きと帰りの電流は完全に一致しているため、ZCTは何も反応しません。

しかし、どこかで漏電が起きて電流が外部へ流れてしまうと、「行き」と「帰り」のバランスが崩れます。この差をZCTが検知すると、内部のリレーが作動して瞬時に遮断する仕組みです。

この仕組みによって、人が感電するようなわずかな電流(10〜30mA程度)でも検知可能となり、安全性が保たれています。

なお、テストボタンを押すと意図的に漏れ電流が発生するような回路が内蔵されており、ZCTが正常に動作するかどうかを簡単に確認できる仕組みも備えています。

つまり漏電ブレーカーは、「漏電によって行きと帰りの電流がズレたら即遮断」というとてもシンプルかつ高度な安全装置なのです。

現場で「漏電ブレーカーが落ちるけど絶縁測定では異常なし」というケースでは、このZCTが非常に微小な漏電を検知している可能性もあるということを、ぜひ覚えておいてください。

第4章:漏電ブレーカーが落ちる“本当の原因”とは?

絶縁抵抗測定では「正常」でも、実際にブレーカーが落ちる――そんな経験、現場ではよくありますよね。
では、なぜブレーカーが動作するのか?その“真のトリガー”はどこにあるのでしょうか。

漏電遮断器(いわゆる漏電ブレーカー)は、「電線を流れる電流の行きと帰りが一致しない=漏電がある」と判断した時に作動します。
つまり、ポイントは電流のバランス。絶縁抵抗の値が一応OKでも、どこかに微小な電流の逃げ道があると、それを検知して遮断するんです。

漏電ブレーカーの仕組みアニメ風図解

たとえば、結露で湿った配線ルートや、古い機器の絶縁劣化…。
実際には「少しずつ漏れる」「通電時だけ漏れる」といった状況も多く、これはメガー(絶縁抵抗計)では測れないのです。

さらに注意すべきは、漏電ブレーカーの定格感度電流
よく使われる30mAタイプなら、わずか0.03Aの漏れでも落ちるわけで、一見“正常”に見える機器でも実はアウト、ということもあります。

このように、絶縁抵抗測定=万全ではないのが現実。
電流の“行って帰る”が成立しているか、漏れがないか――現場では目に見えない電気の流れを、常にイメージする習慣が大切です。

第5章:接地抵抗値の測定と管理の実際

B種接地工事において、設置するだけでは不十分です。重要なのは、接地抵抗値を的確に測定し、その値が規定値以内であることを確認すること。さらに、施工後も定期的に管理していく体制が求められます。

接地抵抗の測定と維持管理を示すイラスト

■ 測定機器と測定タイミング

  • 接地抵抗計(アーステスタ):通常、三端子法(補助接地2本+対象接地)で測定。
  • 測定タイミング:施工完了直後、竣工前検査時、そして定期点検時。

■ 測定時の注意点

  • 乾燥時期や地盤条件により値が変動することがあるため、必要に応じて複数回の測定が推奨されます。
  • 測定ケーブルが他の配線と交差することで、誤差が生じる可能性もあるため、配置にも注意を。

■ 規定値を超えた場合の対応

万が一、接地抵抗値が10Ωを超えてしまった場合には、次のような対策が検討されます:

  1. 接地極の増設(複数のアース棒を直列または並列に打設)
  2. 地面の改良(例えば、ベントナイトなどの導電性材料を使用)
  3. 土壌の含水量を増やす対策

■ 管理体制の重要性

特に重要施設やキュービクル周辺では、接地抵抗の定期測定をルール化しておくことが望まれます。経年劣化や地盤変化によって接地性能が低下することもあるため、「施工して終わり」ではなく「継続的な管理」が必須です。

以上が、接地抵抗測定とその管理に関する基本的な考え方です。次章では、実際の現場で起きたトラブル事例をもとに、B種接地の役割とその限界について掘り下げていきます。

まとめ:B種接地は「図面通り」だけでは終われない

B種接地は、ただ「施工したら終わり」ではありません。
接地線のサイズ・施工方法・接地抵抗値など、すべてが安全の土台となります。特にキュービクルや高圧設備まわりでは、感電や火災といった重大災害を未然に防ぐためにも、この“地味で見えない仕事”が不可欠なのです。

実際の現場では、「設計図通りに接地しておけばOK」と思いがちですが、地盤の条件設備の位置関係によっては、図面通りでは不十分なケースも少なくありません。

だからこそ──
目に見えない「電位差」と向き合い、施工者自身が“疑って、測って、守る”ことが、現場の安全を支える力になります。

この記事が、あなたの現場や設計業務の中で少しでも役に立てば嬉しいです。
今後も「電気の現場で本当に必要な知識」をわかりやすくお届けしていきますので、ぜひ他の記事もご覧くださいね。

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